自己免疫性溶血性貧血(AIHA)について

~患者さんやご家族の皆さまへ~

本内容は正確を期しておりますが、主治医の診断・治療・アドバイスの代わりとなるものではありません。ご自身の健康については、必ず主治医にご相談ください。この情報が、その一助になれば幸いです。

1. どのような病気ですか?

AIHA(自己免疫性溶血性貧血)は、免疫の異常により自分自身の赤血球が壊されてしまう貧血の病気です。本来、体を守る免疫システムが、誤って赤血球を外敵とみなし破壊してしまいます。国の難病に指定されています。

 

 

2. 免疫系の異常とは?

赤血球の表面にある抗原に対して、自己抗体と呼ばれる抗体が作られてしまうことが発端です。この抗原と自己抗体の結合により、主に脾臓で赤血球の破壊(溶血)が進みます。 原因ははっきりとはわかっていませんが、感染症、特定の薬剤、他の病気(膠原病、血液腫瘍)、加齢などが関与していると考えられています。 ※遺伝性ではなく、後天性の病気です。 

 

 

3. 種類について

AIHA には、主に次の2つのタイプがあります。

 

温式 AIHA(wAIHA):

・体温(37°C前後)で赤血球と抗体が結合します。

・多くのAIHA患者さんはこちらに分類されます(全体の約 9 割)。

 

冷式 AIHA(cAIHA):

・低温(体温以下)で抗体が活性化します。

・寒冷凝集素症(CAD)には手足のしびれを伴うことが多いです。

・基礎疾患を持つ二次性CADは、寒冷凝集素症候群とも呼びます。

 

・温式AIHAと冷式AIHAの特徴を併せ持つ混合型(mAIHA)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)は稀な疾患です。

 

 

4. 患者数は?

全国で約2,000人と推定されています。令和5年度の指定難病受給者証所持者数は1,386 名でした。

 

 

5. どんな症状がありますか?

【共通の症状】

・倦怠感(体のだるさ、疲れやすさ)

・立ちくらみ

・息切れ

・めまい

・黄疸

・ヘモグロビン尿(尿の色が濃い)

 

【温式 AIHA】

・慢性的な倦怠感、貧血症状

・脾臓が少し大きくなることがある

 

【冷式 AIHA】

・寒冷暴露による溶血発作

・手足の指先のしびれ、いたみ、色の変化。重症例では壊死(黒くなる)

 

 

6. どんな治療法がありますか?

【温式AIHA】

・副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロンなど)

・効果がない場合:脾臓摘出術、抗CD20 抗体リツキシマブ(リツキサン TM)

 

【冷式AIHA】

・保温

・リツキシマブ(リツキサン TM)

・スチムリマブ(エジャイモ TM)

 

 

7. AIHA と診断されたら?

まずは主治医と相談し、ご自身の症状とライフスタイルに合う治療法を選びましょう。

病気に向き合う第一歩として、医師との信頼関係や、日常生活の工夫も大切です。高額な医療費が係ることもあり、難病申請、高額療養費制度の利用も検討しましょう。

 

 

8. 日常生活でのアドバイス

・適度な運動:無理のない範囲で

・栄養バランス:鉄分、ビタミンB12、葉酸

・ストレス管理:リラックスできる時間を

・定期的な診察:体調の変化を見逃さず

・感染予防:手洗い・うがい・ワクチン接種

・保温対策(冷式 AIHAの方):手袋や帽子など

 

 

最後に

AIHAはまれな病気ですが正しい理解と適切な対応によって、比較的健康な日常生活を送ることが可能です。不安なときは一人で抱え込まず、医師や患者会にご相談ください。あなたとご家族が安心して過ごせる日々が続くことを心から願っています。

 

 

関連リンク

 

※国の難病については、以下の URL(難病情報センターのホームページ)から「自己免疫性溶結性貧血」と検索してください。

 

※難病の申請制度についても、以下の URL(難病情報センターのホームページ)から「医療費助成制度」と検索してください。

https://www.nanbyou.or.jp/

 

 

執筆:小林至峰(PNH倶楽部会員)、宮崎志津子(PNH倶楽部副代表)、岩崎幸之助(PNH倶楽部会員)

 

医療監修:宮川義隆(埼玉医科大学病院血液内科教授)


最終編集 2025/07/22